日本人が歯を失う原因の40%が歯周病です!
歯周病は日本人が歯を失う原因の40%程度を占めており、むし歯と同様に歯にとっては大変、厄介な病気です。むし歯も皆さんが病気として理解することが必要なのですが、歯周病の場合は、むし歯以上に病気だと理解することが大切です。それは何故かというと、むし歯場合は初期の段階でも歯がしみたり、歯に穴があいたりして気が付きやすいのに対し、歯周病の場合は、軽度から中等度ではほとんど症状がなく進行するので、自分ではなかなか気が付きにくいからです。
歯周病の治療 -完全に元には戻らない-
歯周病の治療はおおまかには診査・診断→治療→評価という流れで行われます。つまり、いろいろな検査から得られた情報をもとに治療計画が立てられ、それに沿って治療が進められます。ある程度治療が進んだところで、どのくらい効果があったかの評価診査をします。そこで健康な状態と判断されれば、メインテナンス(維持療法)に移行し、問題が残った場合にはさらに治療を継続し、時には治療計画を見直すこともあります。その場合も、最終的にはメインテナンスで健康を維持していくことになります。
治療の内容としては、歯周病の原因であるプラーク(歯垢=しこう)の除去、すなわち歯磨きが基本になります。他に生活習慣の見直し、スケーリング(歯石除去)、歯周ポケット内の清掃、かみ合わせの調整、外科手術などが症状の程度によって選択されます。
では、歯周病が治ったとは一体どのような状態なのでしょうか。一般的には病気から回復することを治癒(ちゆ)といいますが、歯周病の場合は少し話が違うようです。それは、歯周病の初期である歯肉炎を除けば、破壊された歯周組織が完全に元に戻ることはないからです。
歯周病の権威であるラタイチャーク氏の分類によって歯周治療のゴールを整理すると、「歯周ポケットがなくなる」「歯周組織のそれ以上の破壊を停止する」「炎症がなくなる」という状態が、現時点での「歯周病の治癒」と言えます。すべての歯が理想的な状態でメインテナンスに移れるとは限りませんが、この治癒の3条件に少しでも近づけるように歯周病治療は行われるわけです。
再生医療について
組織を再生させるためには、上の図に示すように3要素が必要とされています。歯周病は1965年までは原因の分からない、歯の周りの骨が溶けていく病気でした。1965年に口腔内の細菌が原因であることが証明され、その後20年にわたって細菌を減らすことだけが歯周病治療でした。しかし、一度失われた骨や歯肉を再生させることは、ほとんど不可能でした。1980年代になり、上の図の「③足場」を作ることによって、かなり骨などの歯周組織を再生できるようになりました。
1990年代には、エムドゲインという特殊なタンパク質を使った再生療法も可能になってきました。そして現在は、上の図の「②増殖因子」を使った再生療法もできるようになってきています。それは患者さん自身の末梢血を採血し、血小板を取り出し活性化してPRP(多血小板血漿)を作り、失われた歯周組織に戻すという方法です。すると、色々な増殖因子(サイトカイン)を放出して、より効率的に再生ができるという方法です。増殖因子に関しましては、近い将来大阪大学で開発中のFGF-2というサイトカインが日本で使用可能となりますので、より簡単に利用できるようになると思います。
さて、最後の「③細胞」ですが、現在のところ歯の周りの細胞を利用するしかないのですが、将来的には骨髄から採取した細胞を培養して利用できる時代がくると思われます。こちらの方は岡山大学で開発中ですが、FGF-2よりもさらに時間が必要と思われます。
ということで、現在当院で行っている歯周再生療法は「②増殖因子」と「③足場」を使った再生療法であり、場合によっては②と③を単独で使用したりしております。また、インプラントに関しましても、骨が不足している場合、骨を再生させるためには上記3要素が重要であり、「②増殖因子」と「③足場」を使えるということで効率の良い再生ができるということになります。
最先端歯周病治療へ光力療法を導入 ペリオウェイブ・システム
■ 「ペリオウェイブ」のメカニズム
「ペリオウェイブ」の光システムは670mmの波長で励起する220mWの低出力の光エネルギーで、光活性剤「バイオジェル」を併用して多くのバクテリアを不活性化し、SRPだけの場合と違って治療後にバクテリアやトキシンを残しません。物理的に細菌を破壊するため、殺菌に抗生物質を使った治療法と違って、バクテリアの抵抗性を刺激することなく、即座にグラム陰性菌を破壊します。
その光活性剤「バイオジェル」は0.01%メテレン-ブルー色素を含む中性リン緩衛液で、この色素はグラム陰性菌およびグラム陽性菌の細胞壁を構成するリリポポリサッカライド、糖脂質の脂質に特異的に統合します。光エネルギーを照射することにより、色素が結合した歯周病原細菌は破壊されます。また、この色素は、生体の細胞には結合しないため、光エネルギーによる侵襲は最小限であることをもわかっています。まさにMinimal Intervention の概念に合致した治療といえるでしょう。
■ 「ペリオウェイブ」適応の実際
「ペリオウェイブ」の基礎となる原理は、歯周疾患を進行させる細菌を除去することにあります。まず、光活性剤「バイオジェル」を歯周ポケット内に塗布します。この色素は、グラム陰性菌とグラム陽性菌両者の細菌壁を構成する内毒素と脂質に結合します。両者の細菌の違いは、細胞壁のペプチドグリカンの厚さであり、グラム陰性菌のほうがより迅速にメチレン-ブルーによって染色されます。
「ペリオウェイブ」の非熱光は光子を生産させ、光活性剤「バイオジェル」の分子と高頻度で結合します。その光子は色素分子に衝突することにより、光線力学連鎖反応が開始され、色素を包囲する酸素分子は、電子を失うことでフリーラジカル(活性酸素)となります。この活性酸素は細菌細胞壁に対して毒性を有しており、細胞壁を分解することによりその細菌は破壊されます。
「ペリオウェイブ」は広い抗菌スペクトルを発揮するシステムであり、歯肉縁下細菌とそれら細菌のもつビルレンスファクターを破壊します。細菌性プロテアーゼ(タンパク分解酵素)、コラゲナーゼ(コラーゲン分解酵素)および内毒素が不活性化される結果、炎症反応は消息して歯周組織の破壊は抑制されます。
つまり、「ペリオウェイブ」は、二重の抗菌作用をもつことになります。歯周病原性のグラム陰性菌を殺菌するのみならず、これら細菌が有する内毒素(LPS)を不活化させるのです。また、抗菌剤を使わないので、耐性菌のリスクもありません。